富田林の部分改修
– 断片の連続 –

工事:改修 / 木造
用途:住宅
場所:大阪府富田林市
階数:1階
写真:大竹 央祐

境内を歩くように暮らす


 寺院の境内にある離れを、新たに子世帯が暮らす住まいへ改修する計画である。離れにはキッチンがなく、生活が完結しない状態であった。そのため、限られた面積の中で水回りを更新しながら、現代的な暮らしに対応した生活空間を確保することが求められた。

 境内の建物群を観察すると、本堂、母屋、門、離れは屋根を介して接続され、一つの大きな建築を形成している。一方で、その内部は均質ではなく、建物を行き来するたびに空間の性格が大きく切り替わる。理由を探ると、境内には二つの異なる更新のあり方が存在していた。外部は寺院としての景観や記憶を維持するため、補修を繰り返しながら現在の姿を保ち続けている。一方、参拝者が立ち入らない母屋や離れの内部は、その時代の暮らしに合わせて更新され続けてきた。寺院として変わらない時間と、住まいとして変わり続ける時間。その二つが重なることで、境内には時代ごとの空間が断片的に積み重なり、一つの建築として連続しながらも、内部では用途に応じて空間の性格が明快に切り替わる構成となっていた。建築としては一体でありながらも、空間の境界が明快であり、それを行き来する体験がこの境内ならではの空間的な魅力となっている。

 そこで本計画では、30㎡という小さな部分改修を、大きな一つの建築に新たな時間を刻む断片として位置付けた。既存に同化することでも対比を強調することでもなく、現代の暮らしを受け止める新たな空間を挿入することで、これまで積み重ねられてきた境内の時間に連続する改修を目指した。

 その手掛かりとしたのが、境内に点在する「門」である。境内では、門をくぐるたびに本堂、母屋、離れへと空間の用途や雰囲気が切り替わる。この体験を住まいへ読み替え、既存と改修部を隔てる境界を門のメタファーとして計画した。境界をくぐることで、既存の和室から白い生活空間へと場面が切り替わる。さらに、玄関から最初に入るダイニングは離れの中で最も天井の高い勾配天井とし、門をくぐった先に広がる中心的な空間として位置付けた。一方、キッチンや洗面は用途に応じて天井高さや形状を抑え、それぞれ異なる空間性を与えている。空間ごとに固有のスケールを設けることで、それぞれが独立した場として感じられるように計画した。その空間の変化を本堂や母屋を行き来する際の体験へと重ね合わせた。

 もう一つ着目したのが、境内を貫く参道である。参道は境界をつなぎながら境内全体を一本の動線としてまとめ、それぞれの断片を一つの体験へと結び付けている。改修前の離れは玄関ホールから各室へ分岐する平面であったが、ホールをなくし、玄関から直接ダイニングへ至る構成へ改めた。これにより面積効率を高めるだけでなく、住まいの内部にも一筆書きの動線を与えている。動線の終点には和室の掃き出し窓があり、視線は本堂へ抜け、その先の参道へと連続する。建物の内部だけで生活を完結させるのではなく、境内を歩くように様々な境界をくぐりながら母屋と離れを行き来する。そうした境内全体を庭のように使う二世帯の暮らしを受け止めることを目指した。

 寺院では建物は補修されながら姿を保ち、住まいは暮らしに合わせて更新され続けてきた。本計画もその時間の積み重ねの中に加わる一つの断片である。この断片もまた、境内を歩くように暮らす日々とともに時間を重ね、その歴史の一部となっていくことを願う。

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