2026-08-31

フィンランド建築巡り|岩をくり抜いてつくられたテンペリアウキオ教会

大阪府藤井寺市を拠点に、住宅・店舗・リノベーションなどの設計を行っている一級建築士事務所 谷口弘和設計室|HTAです。

以前、建築を見るためにフィンランドを訪れました。

今回は、ヘルシンキ中心部に建つテンペリアウキオ教会(Temppeliaukio Church)を紹介します。

大きな岩をくり抜いてつくられた教会で、岩肌をそのまま残した壁、その上に並ぶ端正な天窓、そして円盤のような銅張りの天井が特徴です。

建物に入ると、どんとこの空間が広がる。

構成が明快で、とても分かりやすいインパクトのある教会でした。

1.岩の中に広がる、大きな教会空間

岩肌の壁と天窓に囲まれ、椅子が並ぶテンペリアウキオ教会の内部

入口から内部へ入ると、それまでの低く抑えられた空間から一転して、大きな教会堂が目の前に現れます。

壁は、整えて仕上げた石ではなく、岩を掘削したときのゴツゴツとした表情をそのまま残しています。

自然の岩盤が教会の壁となり、その上に人工的な円盤状の天井が浮かぶ。

自然の形と幾何学的な形が、ひとつの空間の中で強く対比しています。

テンペリアウキオ教会は、建築家のティモ・スオマライネンとトゥオモ・スオマライネン兄弟の設計により、1969年に完成しました。

1961年の設計競技で選ばれた案は、敷地にもともとあった岩山をできるだけ残し、その内側に教会堂を埋め込むものでした。

新しい建物を岩の上に載せるのではなく、すでにある地形の中に必要な空間をつくる。

その考え方が、教会の内外にはっきりと表れています。

2.岩壁と円盤の天井をつなぐ、180枚の天窓

テンペリアウキオ教会の岩壁の上に並ぶ、細長い天窓と放射状の梁

岩壁と円盤状の天井の間には、放射状に細長い天窓が並んでいます。

天窓は全部で180枚。幅の異なるスリットから自然光が入り、岩の壁や祭壇を柔らかく照らします。

重く荒々しい岩壁に対して、天窓は細く端正につくられています。

そこから差し込む光によって、重たい岩の上に円盤の天井が浮かんでいるようにも見えました。

テンペリアウキオ教会の銅張りの円形天井と、その周囲を取り巻く放射状の天窓

天井のドームには銅が使われています。

長い銅の帯を巻くようにつくられた円盤は、荒々しい岩肌とは異なる、均質で精密な表情を持っています。

岩、光、銅という性質の異なる素材が、それぞれの特徴を隠さずに組み合わされている。

その分かりやすさが、この空間の強さにつながっているように感じました。

3.岩肌を生かした、音のよい教会

テンペリアウキオ教会は、音響のよい空間としても知られ、礼拝だけでなくコンサートにも使われています。

ゴツゴツとした岩壁は見た目の迫力をつくるだけでなく、その不規則な凹凸によって音を拡散します。

仕上げを加えて岩肌を隠すのではなく、自然の状態を残したことが、空間の印象と音響の両方に生かされています。

建築の特徴がそのまま教会の使われ方にもつながっているところが、とても素直で魅力的でした。

実際にここで演奏を聴くと、この空間をさらに深く体験できそうです。

4.まちの中に岩山が残る、静かな外観

岩盤と石積みの壁の向こうに銅張りの低いドームが見えるテンペリアウキオ教会の外観

個人的に面白いと思ったのは、教会の外観です。

内部には一目で伝わる大きな迫力がありますが、外から見ると教会らしい塔や大きな正面はありません。

住宅街の中に、岩山がそのまま残っているような佇まいです。

周囲の道路から見ると建物の高さは低く抑えられ、銅張りのドームが岩の上に少しだけ見えています。

内部の強い空間との対比がよく効いていました。

岩山の上には実際に登ることができ、地上から見上げていた天窓の近くまで歩いていけます。

教会を外から眺めるだけでなく、その屋根の上をまちの一部として歩ける。

建築を地形の中に埋め込んだことで、建物の上まで公共的な場所として残されているところにも、この建築の面白さを感じました。

これまでのフィンランド建築巡り

→ フィンランド建築巡り|アルヴァ・アアルト設計のロヴァニエミ市立図書館
https://hta-hta.com/architectere/rovaniemi-city-library-alvar-aalto/

→ フィンランド建築巡り|スティーヴン・ホール設計のキアズマ現代美術館
https://hta-hta.com/architectere/kiasma-museum-steven-holl/

→ フィンランド建築巡り|アルヴァ・アアルト設計のアカデミア書店
https://hta-hta.com/architectere/akateeminen-kirjakauppa-alvar-aalto/

→ フィンランド建築巡り|アルヴァ・アアルトのCafe Aalto
https://hta-hta.com/architectere/cafe-aalto/

テンペリアウキオ教会|施設・建築情報

施設名:テンペリアウキオ教会
英語名:Temppeliaukio Church
所在地:Lutherinkatu 3, 00100 Helsinki, Finland
設計:Timo Suomalainen、Tuomo Suomalainen
設計競技:1961年
完成:1969年
用途:教会、コンサート会場
公式サイト:https://temppeliaukionkirkko.fi/en/

開館時間、礼拝やイベントの予定、入場料などの最新情報は、教会の公式サイトをご確認ください。

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