フィンランド建築巡り|アルヴァ・アアルト設計のロヴァニエミ市立図書館

大阪府藤井寺市を拠点に、住宅・店舗・リノベーションなどの設計を行っている一級建築士事務所 谷口弘和設計室|HTAです。
以前、建築を見るためにフィンランドを訪れました。
今回は、フィンランド北部の街・ロヴァニエミに建つ、アルヴァ・アアルト設計のロヴァニエミ市立図書館を紹介します。
外観からは少し閉じた印象を受ける図書館です。閉じた壁面の上に並ぶガラスが目立ち、その上部から光を取り込む構成になっています。
1.閉じた外観の内側に広がる、見通しのよい空間

建物の中に入ると、外観の印象とは対照的に、見通しのよい水平な空間が現れます。
一般的な図書館では、本棚が並ぶことで視線が遮られ、奥まで見通せないことが少なくありません。

この図書館では、書庫部分が一段低く計画されています。そのため、手前の本棚越しに外壁側の本棚まで見渡すことができ、広がりのある気持ちのよい空間になっています。
床に高低差をつけることで、本棚の高さを抑えたように見せながら、必要な蔵書量も確保する。図書館という用途に対して、断面の操作がとても素直に働いていました。
2.一段下がった書庫がつくる、落ち着きと開放感

一段下がった書庫スペースに入ると、今度は周囲の視線が適度に遮られ、落ち着きが生まれます。
上を見上げれば、トップライトまで三層分ほどの高さを感じる吹き抜けがあり、低い場所に包まれる安心感と、上へ抜ける開放感が同時にあります。

全体を見渡したときの広がりと、書庫の中に入ったときの居心地。その二つが、わずかな床レベルの違いによって自然につくられていました。
3.本を守りながら、柔らかな自然光を取り込む

書庫の奥には、トップライトから柔らかな反射光が入ってきます。
曲線を描く白い壁がトップライトの光を受け止め、室内へ拡散する仕組みです。光源が直接目に入りにくく、壁や天井そのものが明るくなることで、穏やかな明るさが広がっています。

自然光と本は、必ずしも相性のよい組み合わせではありません。強い直射光は本を傷め、まぶしさも生みます。
ここでは自然光をそのまま落とすのではなく、曲面に反射させてから室内へ導くことで、その難しさを建築的に解いています。この柔らかな光が、図書館全体の居心地のよさにつながっているように感じました。
4.家具と照明まで続く、アアルトのデザイン

館内には、これぞアアルトと思わせる家具や照明が並びます。
建築の大きな構成だけでなく、人が座る椅子や机、手元を照らす照明まで一体としてデザインされているため、空間全体に無理がありません。
特別な形が目立つというより、使う人の近くにあるものほど優しく、自然に身体へなじんでいる。アアルトの建築らしさを、細部からも感じることができました。
5.これまで訪れた中で、一番好きな図書館
ロヴァニエミ市立図書館は、私がこれまで訪れた図書館の中で、一番好きな図書館になりました。
図書館は、時間を気にせず、ゆっくりと過ごしたい場所です。見通しのよさ、適度に視線を遮る段差、上から降りてくる柔らかな光。そして、身体になじむ家具と照明。
人に寄り添う優しい建築をつくるアアルトと、図書館という用途は、とても相性がよいのだと思います。
こんな図書館が家の近くにあったら。訪れている間、何度もそう思いました。
これまでのフィンランド建築巡り
→ フィンランド建築巡り|スティーヴン・ホール設計のキアズマ現代美術館
→ フィンランド建築巡り|アルヴァ・アアルト設計のアカデミア書店
→ フィンランド建築巡り|アルヴァ・アアルトのCafe Aalto
ロヴァニエミ市立図書館|施設・建築情報
施設名:ロヴァニエミ市立図書館
英語名:Rovaniemi City Library
所在地:Jorma Eton tie 6, 96100 Rovaniemi, Finland
設計:Alvar Aalto and his office
設計期間:1961–1965年
用途:図書館
建築情報:Visit Alvar Aalto|Rovaniemi City Library
開館時間や休館日などの最新情報は、施設の公式情報をご確認ください。
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