名古屋市美術館「スウェーデン・テキスタイル」へ|黒川紀章の建築と北欧デザイン







藤井寺市で設計事務所をしているHTAです。
名古屋市美術館で開催されている「スウェーデン・テキスタイル 暮らしと自然に息づく北欧デザイン」を見に行ってきました。
今回の目的は展示ですが、名古屋市美術館は黒川紀章の設計。展示とあわせて、建築もじっくり見てきました。
公園の中に低く佇む名古屋市美術館
名古屋市美術館は、白川公園の中に建つ地下1階・地上2階の美術館です。
まず印象的だったのは、建物の高さがとても低く抑えられていること。
公園の中にこれだけの規模の建築がありながら、圧迫感をほとんど感じません。
隣接する名古屋市科学館との対比も強く、それぞれが公園や街に対してどのように存在しようとしているのか、建築としてのスタンスの違いがよく現れているように感じました。
建物そのものの造形だけでなく、街や公園の中で建築がどうあるべきか。その関係まで含めて考えられているところが印象に残りました。
1980年代の建築に見る、色とモチーフ
内部に入ると、1980年代の建築らしいモチーフや、強調された色使いが目に入ります。
特徴的な開口部を持つ階段、艶のある白い壁面。そこに光が反射し、空間全体へ柔らかく広がっていきます。
その中で手すりには、はっきりと主張する緑色。
白い空間に緑の線が入り込んでいるようで、どこか可愛らしさのある空間でした。
もちろん、現在から見ると時代を感じるデザインでもあります。
ただ、既存建築のリノベーションが増えてきた現在では、既存の色や素材を読み替えたり、あえて色そのものを主題としたりするプロジェクトも多く見られます。
そう考えると、こうした時代の建築に見られる大胆な色の使い方も、改めて見るととても参考になります。
公園と美術館をつなぐ吹き抜け
館内には3層の吹き抜けとなった展示空間があり、サンクンガーデンとともに公園と美術館をつないでいます。
地下まで空間が連続することで、低く抑えられた外観から想像する以上の奥行きがあります。
地上では公園の風景に建築の高さを合わせながら、内部では地下を利用して大きな空間をつくる。
外部と内部で建築のスケールの感じ方が変わるところも面白く感じました。
波打つファサードと記号的な造形
外観には、波打つような特徴的なファサードが見られます。
曲面のファサードというと、同じ黒川紀章設計の国立新美術館を思い浮かべます。
ただ、1980年代に建てられた名古屋市美術館の方が、ひとつひとつの形に明確な輪郭があり、より記号的な造形として感じられました。
円や曲線、直線、色といった異なる要素が、それぞれの存在を主張しながらひとつの建築をつくっています。
時代による黒川紀章の建築表現の違いを見比べてみるのも面白そうです。
「スウェーデン・テキスタイル」へ
そして今回の目的だった「スウェーデン・テキスタイル 暮らしと自然に息づく北欧デザイン」。
ひたすらに、かわいいです。
展示室内で写真を撮影できる場所が限られているため、ここではすべてを紹介できません。ぜひ実際に足を運んで見てほしい展示です。
かわいらしい色や柄に目を奪われますが、その背景にはスウェーデンのテキスタイル文化の長い歴史があります。
北欧では冬が長く、家の中で過ごす時間も長くなります。
そうした気候や暮らしを背景に、家具やテキスタイルといった室内を構成するものへのこだわりが育まれ、明るい色彩を持つものも数多く生まれてきたのだと思います。
日本に暮らしていると、なかなか同じ感覚を持つことはありません。
だからこそ、気候や生活環境がデザインに対する強いこだわりを生み、それがひとつの文化として長く続いていることがとても面白く感じられました。
建築家や陶芸家からテキスタイルへ
もうひとつ興味深かったのが、展示されている過去のデザイナーたちの経歴です。
それぞれのプロフィールを見ていくと、最初からテキスタイルだけを専門としていたわけではなく、陶芸や建築など、異なる分野を背景に持つデザイナーがいることも印象に残りました。
建築、陶芸、家具、テキスタイル。
現在ではそれぞれ別の専門領域として捉えてしまいがちですが、暮らしをつくるという視点で考えれば、本来はとても近いところにあるものなのかもしれません。
今回の展示では、テキスタイルそのものの可愛らしさだけでなく、その背景にある暮らしや気候、そしてデザイナーたちが分野を横断してものをつくってきた歴史まで見ることができました。
黒川紀章による1980年代の建築と、スウェーデンの色鮮やかなテキスタイル。
建築と展示の両方から、色や形、そして暮らしとデザインの関係について考えることのできる一日になりました。
展覧会情報
スウェーデン・テキスタイル 暮らしと自然に息づく北欧デザイン
会場:名古屋市美術館
会期:2026年7月11日(土)〜9月6日(日)
所在地:愛知県名古屋市中区栄二丁目17番25号(白川公園内)
開催情報や開館時間については、名古屋市美術館の展覧会公式ページをご確認ください。
