2026-08-09

京都の古物店・セレクトショップを巡る|藤井寺の店舗設計のためのリサーチ

藤井寺市で設計事務所をしているHTAです。

現在、藤井寺市で「事務所と店舗」の設計を進めています。

その店舗空間を考えるため、京都にある古物店や個性的なセレクトショップをいくつか巡ってきました。

古物や一点ものなど、それ自体に強い個性を持つ商品を扱う店では、その背景となる空間はどのようにつくられているのか。

什器にはどのようなものが使われているのか。

そして、店と街との境界になるファサードはどうつくられているのか。

今回は店内でパシャパシャと写真を撮ることは控えたので、写真は外観が中心です。

ただ、いくつもの店を続けて巡ってみると、それぞれ違う店でありながら、共通しているところも少しずつ見えてきました。

01|SHOPものや

最初に訪れたのは、京都市北区にある「ものや」。

京都を拠点に、古道具屋とデザインスタジオという二つの軸で活動されています。

京都市北区の町家を改装し、1階をショップ、2階をデザインスタジオとして使用。ショップでは用途や時代を問わず蒐集した古道具などを扱い、その蒐集や配置から得られた感覚を家具や空間設計などの活動にもつなげています。

住所は京都市北区紫竹竹殿町16です。

SHOPものや Instagram

ものや Design Studio Instagram

02|antique 分室

2軒目は「antique 分室」。

小さな平屋の古民家をリノベーションしてつくられたアンティークショップです。店内には、フランスやベルギーのブロカントを中心とした器や生活道具が並んでいます。

古い建物の雰囲気を残しながら、棚やテーブルなどの古物を什器として使っているのも印象的でした。

Instagram|antique 分室

03|keiokairai building

続いて訪れたのが、一乗寺にある「keiokairai building」。

3階建ての建物で、フロアごとに異なる店舗・空間が入っています。

1階の「visionary」は、フードやドリンクとともにアートブックや音楽を楽しむ120分制の体験空間。

2階の「afterglow」は、ヴィンテージの洋服を中心に、ファッション、アート、音楽、古道具などを扱うセレクトショップです。

3階の「聴覚と視覚」では、海外のアンビエント音楽レーベルのレコードやアートブックを販売しています。

住所は京都市左京区一乗寺高槻町28-2。叡山電鉄・一乗寺駅から徒歩約4分です。

keiokairai building 公式サイト

keiokairai Instagram

04|やっほ

出町柳近くにある「やっほ」。

古家具、クラフト、植物などを扱うお店です。

公式サイトでは、さまざまな古家具も紹介・販売されています。

住所は京都市上京区河原町今出川下ル梶井町448-60。営業日は水・木・土・日、営業時間は12時から17時となっています。

やっほ 公式サイト

やっほ Instagram

05|VOU

最後に訪れたのは、京都市下京区にある「VOU」。

作家作品を扱うショップで、オリジナルのグッズやアパレルなども展開しています。また、展覧会やイベントも開催されています。

現在の店舗は3階建てで、ショップ、ギャラリー、イベントなど複数の機能を持つ場所として運営されています。

住所は京都市下京区筋屋町137です。

VOU Instagram

06|店を巡ることで見えてきたこと

学生時代から、建築を考えるときの「リサーチ」が好きでした。

いくつもの事例を見て、観察して、そこにある共通項や違い、問題点を整理していく。

学生時代には、そうやって観察したものを整理し、そこから自分なりの設計の糸口を見つけていくことを繰り返し学びました。

設計事務所をしている今も、この方法はとても役に立っています。

今回も、一つの店だけを見て「格好いい」で終わるのではなく、いくつもの古物店やセレクトショップを続けて巡ってみました。

すると、それぞれ全く違う店でありながら、いくつか共通していることが見えてきました。

まず気になったのが、白い壁など、ニュートラルな背景が多いこと。

古物や作家もの、一点ものなどは、それ自体に色や素材感があります。

新品とは違う傷や経年変化も含めて、一つひとつのモノが強い存在感を持っています。

だからこそ、その背景となる建築は主張しすぎず、比較的ニュートラルにつくられているように感じました。

07|古物が、そのまま什器になる

もう一つ面白かったのが、店内の什器です。

机や台、本棚、キャビネット、ショーケースなど、店舗用として新しくつくられたものだけではなく、古物そのものが什器として使われています。

そこにDIYでつくられたオリジナルの什器などが加わります。

これは単に「古い家具を使うと雰囲気が出る」ということだけではないように感じました。

什器が建築に固定されていないため、商品の量や種類に応じて自由に動かすことができます。

机を移動する。本棚を増やす。新しく仕入れた古い台の上に商品を並べる。

そう考えていくと、古物店という業態の面白い特徴が見えてきます。

古物の仕入れそのものが、空間づくりに直結しやすい。

新しく仕入れたものが商品になるだけではなく、ときにはそれ自体が什器となり、店内のレイアウトまで変えていく。

商品が入れ替わることで、店の風景も変わっていきます。

つまり、オープンしたときが空間の完成ではありません。

仕入れを繰り返しながら、店そのものが少しずつ変化していく。

だからこそ建築側で最初からすべてを作り込みすぎるのではなく、後から自由に変えていける余白と、さまざまな古物を受け止められるニュートラルな背景が必要なのではないかと感じました。

08|意外と閉じているファサード

そして今回、外から店を見ていて特に興味深かったのがファサードです。

今回巡った店では、大きなガラス張りにして、街に向かって全面的に開いているような店はそれほど多くありませんでした。

むしろ、少し閉じています。

中が全部見えない。

店によっては、外から店内への視線がほとんど通らないところもあります。

扉を開けて初めて、その店の世界に入る。

そうした少し閉じたつくりが、外の街とは異なる店内の世界観を強めることにつながっているように感じました。

今回は店内ではなくファサードの写真が中心になったことで、逆にこのことを強く意識するようになりました。

09|藤井寺では、もう少し街へ開いてみたい

今回のリサーチは、現在設計を進めている「藤井寺の事務所と店舗」を考える上でも、たくさんのヒントになりました。

ただし、京都で見た店をそのまま真似したいわけではありません。

共通する特徴を見つけた上で、藤井寺ではどうするかを考えたいと思っています。

内側に独自の世界観をつくることは大切にしながら、藤井寺では、もう少し建築的に街へ開いてみたい。

全面ガラス張りにして店内をすべて見せるのではなく、古い椅子や家具、道具などがファサードの一部となって、外からも古物の気配が感じられる。

古物が店の奥に収まるだけではなく、少しだけ外へ表出してくるような関係です。

道を歩いている人が、

「ここは何だろう?」

と少し気になるくらいがいい。

内側につくった世界観を、古物を介して少しだけ街へ表出させる。

そんな店舗のあり方を考えています。

一方、内部については、今回のリサーチから「完成させすぎないこと」も重要だと感じました。

仕入れによって什器が増え、配置が変わり、店の風景も変化していく。

建築はその変化を邪魔するのではなく、受け止める背景になる。

「藤井寺の事務所と店舗」でも、使いながら少しずつ変わっていくことのできる、余白を残した空間をつくりたいと思っています。

10|リサーチはまだまだ続く

京都には、今回行くことのできなかった古物店やセレクトショップがまだまだあります。

本当はもっと巡りたかったのですが、時間が足りませんでした。

また京都へ行って、どんどんリサーチを深めていきたいと思っています。

店を訪れる。

モノの置かれ方を見る。

什器を見る。

ファサードを見る。

そして、それぞれを単独で見るだけではなく、いくつもの事例を並べて、共通するところや違うところを考えてみる。

学生時代から続けてきたこのリサーチの方法は、今の設計にもつながっています。

実際の場所へ行き、自分の目で見て、そこから気づいたことを設計へ持ち帰る。

これからもいろいろな店を巡りながら、「藤井寺の事務所と店舗」の設計を深めていきたいと思います。

トップへ戻る