2026-08-23

フィンランド建築巡り|スティーヴン・ホール設計のキアズマ現代美術館

キアズマ現代美術館の吹き抜けに伸びる曲線スロープと天窓

キアズマ現代美術館の白い曲面壁に沿うスロープと来館者

赤い天井と黄色い案内壁、赤いベンチがあるキアズマ現代美術館のロビー

天窓の光が差し込むキアズマ現代美術館の曲線スロープ

キアズマ現代美術館内のミュージアムショップ

キアズマ現代美術館の白い展示壁に設置された黒い立体作品

大阪府藤井寺市を拠点に、住宅・店舗・リノベーションなどの設計を行っている一級建築士事務所 谷口弘和設計室|HTAです。

以前、建築を見るためにフィンランドを訪れました。

前回紹介したアルヴァ・アアルト設計のアカデミア書店に続き、今回はヘルシンキ中心部に建つキアズマ現代美術館(Museum of Contemporary Art Kiasma)を紹介します。

キアズマは、アメリカの建築家スティーヴン・ホール(Steven Holl)の設計による現代美術館です。

1993年に行われた国際設計競技で、516案の中からスティーヴン・ホールの「Chiasma」が選ばれ、1998年に開館しました。

建物の名前である「Kiasma」は、交差や交錯を意味する言葉に由来しています。

有機的な曲線、光の扱い、素材の陰影。そして、白いホールと展示空間の強い色彩。

建物の中を歩くことで、空間が次々と変化していく美術館でした。

1.エントランスから広がる白いホール

建物に入って、まず目に飛び込んでくるのが、大きな白いホールです。

エントランスを抜けると、天井の高い空間が一気に広がります。

ホールを形づくっているのは、まっすぐな壁ではなく、ゆるやかにカーブする大きな壁です。

床や壁、天井の境界も一目では捉えにくく、空間全体がひと続きになっているように感じられました。

二枚の高いコンクリート壁が交差し、そこにスロープや階段が組み合わされています。

建物の名前である「キアズマ=交錯」という考え方が、エントランスホールの構成にも表れていました。

2.曲線とトップライトがつくる均質な光

白いホールでもうひとつ印象に残ったのが、光の扱いです。

有機的な曲線を描く壁に沿ってトップライトが設けられ、上部から光が落ちています。

前回紹介したアカデミア書店では、特徴的なトップライトから自然光が落ち、そのときの天候や時間によって光の表情が変化していました。

一方、キアズマを訪れたときに感じたのは、トップライトからの光と人工照明を組み合わせ、空間全体の明るさを均質に整えているような印象です。

現代美術館では、作品を見るための環境を安定させる必要があります。

自然光をそのまま取り入れるのではなく、人工照明と組み合わせながらコントロールすることで、光そのものの存在を感じさせつつ、展示空間としての明るさもつくっていました。

フィンランド建築巡り|アルヴァ・アアルト設計のアカデミア書店

同じヘルシンキにある建築でも、光の取り入れ方や見せ方が大きく異なります。

続けて見て回ると、それぞれの建築家が光をどのように捉えているのか、その違いを感じられるのも面白いところです。

3.わずかな凹凸が強調する光と影

白い壁を近くで見ると、表面は完全に平滑ではなく、手仕事によるわずかな凹凸があります。

展示室の壁や天井には、手作業による白い塗り仕上げが施されています。

均質な光を受けながらも、表面の細かな凹凸によって小さな陰影が生まれ、白い空間が単調に見えません。

壁の形だけでなく、その表面にどのような仕上げを施すかによっても、光の見え方は変わります。

遠くから見ると、ひと続きの白い曲面。

近づいて見ると、塗りの跡や細かな陰影が現れる。

大きな空間構成だけでなく、仕上げのわずかな表情まで光を受け止める要素として考えられているように感じました。

4.白いホールと対比する、強い色の空間

白いホールから内部へ進むと、今度は色味の強い空間が現れます。

キアズマの内部では、白だけでなく、黄色や赤、黒などのはっきりとした色が使われています。

白いホールの静かな印象とは対照的で、空間の切り替わりがとても鮮明です。

特に印象に残ったのが、壁に設けられた館内サインです。

単に文字や矢印を取り付けるのではなく、建物の有機的な形状を思わせる輪郭でつくられていました。

サインだけを切り取って見ても、キアズマの建築であることが分かりそうです。

案内表示として必要な機能を持ちながら、建物全体のデザインの一部にもなっている。

少しかわいらしさもあり、つい立ち止まって見てしまいました。

5.普通の電球に加えられた、小さな造作

館内では、大きな空間だけでなく照明の細部にも工夫が見られました。

使われているのは、一見するとごく普通の電球です。

ただし、そのまま取り付けるのではなく、電球のまわりに簡単な造作を加えることで、キアズマの空間に合わせた照明になっています。

特別な形の照明器具を一からつくらなくても、既製品に少し手を加えることで、その場所だけの表情を生み出すことができます。

複雑で高価なものを使うことだけが、オリジナリティをつくる方法ではありません。

身近なものにどのような造作を組み合わせるか。

その小さな工夫によって、既製品を建築の一部にしているところが印象的でした。

6.歩くことで変化する建築

キアズマは、ひとつの場所から建物全体を見渡して理解できる建築ではありません。

曲線を描く壁に沿って歩き、スロープや階段を上りながら、少しずつ異なる空間へ移動していきます。

白く明るいホールから、色の強い内部空間へ。

大きな曲面から、サインや照明の小さなディテールへ。

歩くたびに見えるものや光の状態が変わり、その連続によって建築全体がつくられています。

スティーヴン・ホールは、光や素材、身体の動きを通して建築を体験させる建築家です。

キアズマでは、有機的な形を見るだけでなく、その中を実際に歩くことで、空間が交わり、ねじれながら続いていく感覚を体験できました。

白いホールの大きな曲線から、普通の電球を生かした小さな造作まで。

建築のスケールを行き来しながら、じっくりと見て回りたくなる美術館でした。

キアズマ現代美術館|施設・建築情報

施設名:キアズマ現代美術館
英語名:Museum of Contemporary Art Kiasma
所在地:Mannerheiminaukio 2, 00100 Helsinki, Finland
設計:Steven Holl Architects
設計競技:1993年
開館:1998年
用途:現代美術館
規模:地上5階、延床面積約12,000㎡
公式サイト:Museum of Contemporary Art Kiasma

開館時間、休館日、入館料などの最新情報は、公式サイトをご確認ください。


谷口弘和設計室|HTAは、大阪府藤井寺市を拠点とする一級建築士事務所です。

藤井寺市をはじめ、柏原市・羽曳野市・八尾市・松原市・富田林市など南大阪を中心に、新築住宅の設計、リノベーション、店舗設計などを行っています。

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記事内の施設情報は、キアズマ公式の建築紹介を確認して構成しています。

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