伊賀市旧上野庁舎改修 MARU。architectureときりん|坂倉準三の建築を未来へつなぐコンバージョン






昨日のk-toolsさんからの続き。
伊賀市にある「伊賀市旧上野庁舎改修」を見学しました。
この建築は、1964年に坂倉準三建築研究所によって設計された旧上野市庁舎を活用し、図書館とホテルへとコンバージョンされた珍しい事例です。
歴史ある公共建築を残しながら、現代の暮らしに合わせて新たな役割を与える改修は、これから増えていく既存建築活用のひとつの可能性を示しているように感じました。
改修設計は「MARU。architecture」さんが担当されています。
今回は、建築空間だけでなく、同じ旧庁舎内にある「きりん」さんによるお土産屋も合わせて見学しました。
旧庁舎から図書館とホテルへ
旧上野庁舎は、力強いRC造の構造躯体が特徴的な建築です。
規則的に並ぶ柱や梁によるグリッド状の空間は、1960年代の近代建築らしい力強さを感じます。
その大きな特徴を残しながら、内部には図書館やホテルとして必要な新しい要素が挿入されています。
RCの構造躯体のリズムに寄り添うように、軽い素材による家具や什器が配置されていました。
特に印象的だったのは、規則的なグリッドに対して、曲線を描く本棚やカウンターが入り込んでいることです。
直線的で硬くなりやすい空間の中に、柔らかな曲線や人の動きを感じる要素が加わることで、空間に自然な動きが生まれ、居心地の良さにつながっているのではないかと感じました。
既存建築の力強さを消すのではなく、その魅力を活かしながら新しい使われ方をつくる。そのバランスがとても参考になる改修でした。
建築に寄り添う「きりん」のお土産屋
旧庁舎内には、設計事務所「きりん」さんによるお土産屋があります。
建築関係者にとっては、旧庁舎の改修空間と合わせて見ることができる、とても貴重な場所だと思います。
こちらの店舗も、既存建築や改修設計に呼応するように、木の架構が計画されています。
RC造の力強い空間に対して、木の架構がリズムを合わせるように配置されており、商品を引き立てる背景として機能しています。サッシとの割付もきれいです。
土産物という色や情報量の多い商品を扱う空間でありながら、架構自体は主張しすぎず、空間全体に自然に馴染んでいました。
特に参考になったのは、木架構にライティングレールが仕込まれていることです。機能もこの架構で処理されているので、より架構の意味が強くなります。
また、木材をシルバー塗装することで木らしさを抑え、既存のRC空間に合わせている点も印象的でした。
素材の特徴をそのまま見せるのではなく、周囲の建築との関係性を考えて表現を調整する。
この考え方は、設計する上でとても大切な視点だと感じました。
RC建築と木架構の可能性
今回の建築は、個人的にもとても見たかった事例でした。
現在、藤井寺の事務所と店舗改修では、RC造の躯体に木の架構を組み合わせる計画を考えています。
既存のコンクリート空間に対して、どのような素材を加えることで新しい居場所をつくることができるのか。
今回の伊賀市旧上野庁舎改修と「きりん」さんの店舗は、そのヒントになる多くの学びがありました。
古い建築をただ新しくするのではなく、建物が持つ時間や特徴を読み取りながら、新しい価値を加えていく。
これからの建築やリノベーションにおいて、とても重要な考え方だと感じました。
伊賀市旧上野庁舎改修
所在地:三重県伊賀市
設計:MARU。architecture
旧庁舎設計:坂倉準三建築研究所
参考記事:
architecturephoto
「旧庁舎の土産物店」
